コラム
コラム
2008.06.06
高齢者の狭心症、心筋梗塞
合併疾患を有することが多く、初期症状に気づきにくい高齢者こそ、循環器科の受診をおすすめします。
心臓は全身の臓器に血液をおくるポンプの役割をしています。心臓自体も血液を必要としており冠動脈は心臓の筋肉(心筋)へ酸素や栄養を供給する血管です。そのため冠動脈は心臓の生命線ともいうべき大切な働きをしております。この冠動脈の内側に脂肪などがたまり内腔(くう)が狭くなり血流が悪くなって、心筋に十分な酸素を供給できず、胸の痛みや圧迫感が出現します。これが狭心症です。
心筋梗塞(こうそく)は、冠動脈に血栓と呼ばれる血の塊がつき、完全に塞(ふさ)がり心筋が壊死(えし)してしまった状態になり激しい痛みが出現し持続する病気です。心筋梗塞はきわめて危険なため素早い治療が必要となり、急性期に閉塞(へいそく)した冠動脈を再開通させる治療が施されると、その後の経過が良くなることが知られています。近年人口の高齢化に伴い狭心症および心筋梗塞における高齢者の占める割合は増加しています。従来、人口統計では65歳以上を高齢者と分類し、さらに74歳までを前期高齢者、75歳以上を後期高齢者と分類されています。特に75歳以上において種々の合併症や死亡率が高くなることが報告されています。その理由は、中年者に比べ、冠動脈の病変は高度かつびまん性であり、腎臓(じんぞう)の機能低下などほかの臓器の障害や糖尿病、脳血管障害などの合併疾患を有することが多いためです。高齢者の場合、典型的な胸痛を自覚することが少なく、心筋の障害が悪化してから息切れ、動悸(どうき)などの非典型的症状で診断に至ることが多く見られます。
この十数年においては冠動脈に対するカテーテルと呼ばれる中が空洞の細いチューブによる治療は進歩も著しく高齢者においても積極的に行われています。実際、高齢者とはいっても患者個々人において歴年齢と肉体年齢に隔たりがあったり、合併疾患も個人差があります。医師の側もこうした患者さんの活動度を考慮しつつ、高齢であることを理由にいたずらに治療を手控えるべきではなく、十分なコミュニケーションの上で治療にあたる方針ですから、高齢の方こそ循環器科を受診し諸検査を受けられることをおすすめします。