コラム
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2016.01.21
無人島レコードをあげてみましょう
もしこれから一生涯 無人島で一人で暮らさなければならなくなったとしたら、しかし其処にはオーディオがあり、レコード(アナログでもCDでもOK)を5セットだけ持参が許されるとしたら、さて何を選びますか?2枚組・3枚組・ベストでも可とします。
これほど音楽ファンの好奇心をくすぐる奥深い質問はないかもしれません。
自らの音楽体験を振り返り、改めてじっくり棚を眺め直してみたり、無人島での暮らしぶりを空想してみたり。
勿論その時の気分次第とは存じますが、小生の現在の5枚を次に挙げてみます。
①ザ・バンド他 ラストワルツ 1976年
中学生の頃からロックが好きでしたがハードロック・プログレは苦手の方で、もっぱらこの手のアメリカの方を好んでおりました。70年代アメリカンロックの集大成ともいえる作品で味わい深い余韻に満ち、流行にぶれない彼らの熱い音楽観に圧倒されます。
マーチン・スコセッシ監督のドキュメンタリー映画も素晴らしく、豪華ゲストのなかでもニール・ヤングとDrジョンの演奏は秀逸でした。特に終盤の「オフェリア」はニューオリンズ風のブラス・ホーンが加わり圧巻で、進級試験の朝はこれを聞いて景気づけて登校したものです。(しかし、ほとんどが再試となり、結局憂歌団の「嫌んなった」をかけて落ち込んでいました)
②細野晴臣 泰安洋行 1976年
高校1年の時はっぴいえんどを知り、以後はその流れの日本のロック・ポップスに浸る生活となりました。その中でもこのアルバムは出色の作品です。全曲が洗練されたうきうきする楽曲ばかりで名盤のcriteriaを楽々クリアしています。その卓越した音楽性と日本の大衆音楽のレベルアップへの貢献を評価され、細野さんは平成19年度芸術選奨の文部科学大臣賞を受賞されています。細野さん周辺の音楽家~大瀧詠一、山下達郎、荒井由実、小坂 忠、久保田麻琴、南 佳孝、矢野顕子、ムーンライダーズそして加藤和彦など全てが小生のかけがえのないご贔屓でした。彼らの音楽を自覚的に選んだのは小生のささやかな財産です。この時代で小生の時間は止まっているようです。ところで、インターネットから好きな曲だけをダウンロードするだけで事が足りる昨今の聴き方は如何なものかと思います。
やはりジャケットを愛で、パーソネルやデータを確認しトータルとしてアルバムを味わうのが身上と信じています。
③森山威男クインテット ハッシャバイ 1978年
ジャズからは迷いましたがこれに決めました。発売時に中島公園のヤマハホールでの演奏に接し大いに感激したものです。
コルトレーンに傾倒し新主流派の薫陶を受けた彼らの音楽には、軟弱フュージョンが跋扈した当時のジャズシーンのなかで凛とした骨太新宿ジャズの矜持を感じました。テーマ曲のテナーとピアノはいつ聴いても感極まります。
④オーティス・レディング ライヴ・イン・ヨーロッパ 1967年
リズム&ブルーズあるいはソウルは比較的小生の専門分野でモータウンよりはスタックスやアトランテックなどの南部系の志向ですが、やはり1枚となるとオーティスに尽きます。
バックバンドであるMG’sの盤石な演奏とエネルギーの塊となって迫る歌声には興奮したものです。万人の胸に感動を去来させる名盤と確信しております。彼は多くの音楽家に多大な影響を与え、特に忌野清志郎も然ることながら、札幌のバンド ベーカーショップ・ブギーも知る人ぞ知る和製オーティスとMG’sといえます。機会があったらベーカーショップ・ブギーの演奏もお勧めします。
⑤六代目 三遊亭 圓生全集 上下
最後は落語で締めさせていただきます。高校でちょっと落語研究会に在籍したのですが、円鏡(後の橘家円蔵)、林家三平、歌奴(後の三遊亭圓歌)などの派手なお笑いが好きで、圓生はかなり渋すぎて敬遠していました。しかし、小生も齢を重ね、その端正で完璧な話芸と表現力に惹かれるようになった今日この頃です。「芝浜」「死神」「鼠穴」などはきっと何度聞いても無人島生活において退屈しないのではと思います。
さて諸先輩のお好みはいかがなところですか。ぜひご教示ください。